ビットコイン取引にテクニカル分析が欠かせない理由とは?
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テクニカル分析の主な目的は、金融商品の過去のパフォーマンスを分析して、将来の値動きを予想することです。テクニカル分析を駆使するトレーダー(テクニカルトレーダー)は、価格変動や取引高、価格レベル、立会いの状況を見極めて、投資リスクをヘッジします。一方、テクニカルアナリストの主な業務は、過去の価格推移やパターンを観察・解釈して、取引のアイデアを練り、次の価格トレンドを予想することです。
伝統的な金融市場で、テクニカル分析(TA)は株式などの資産評価に幅広く採用されてきました。しかし、伝統的資産だけではなく、新たに登場した仮想通貨(暗号資産)市場においても、デジタル資産取引で重要な役割を果たしています。実のところ、テクニカル分析を理解すること自体は短期間で簡単にできます。ただし、使いこなすには相応の訓練が必要です。
以下のセクションでは、トレーダーが仮想通貨のテクニカル分析で知っておくべき事項をすべてご紹介します。
テクニカル分析(TA)とは?
テクニカル分析では、過去の価格変動や取引高を分析し、対象資産の将来の値動きを予想します。過去の取引活動やチャートのパターンを見極めて、市場のトレンドや取引の機会を洗い出すのです。
テクニカル分析とファンダメンタルズ分析のいずれも、複数の要因を踏まえて価格を分析します。ファンダメンタルズ分析では、経済イベントや、ファンダメンタルズ情報の発表、地政学イベントを中心に、価格の方向感を探ります。
一方、テクニカル分析は、過去のイベントや価格変動、取引活動のみに基づいています。テクニカル分析の最大の長所は、ファイナンスの高度な専門知識を持っていなくても利用できることです。市場の需給要因やテクニカル指標の基本的な考え方を理解できれば、だれでも簡単に有望な取引の機会を見いだせます。
テクニカル分析の歴史は、17世紀のアムステルダムや18世紀の日本までさかのぼります。ただし、近代のテクニカル分析は、ウォール・ストリート・ジャーナルの創業者で、金融ジャーナリストとして活躍したチャールズ・ダウ氏によって考案されました。
ダウ氏は、金融商品が多くの場合にトレンド内で推移し、大半の時間軸で一定のレンジ内に収まる傾向を最初に発見した人物です。後に、その発見からダウ理論が生み出され、テクニカル分析が普及する原動力になりました。
テクニカル分析のしくみ
テクニカル分析では、過去の価格変動を調査して、将来の値動きを予想します。その根底には、「金融商品の価格はランダムには変化しない」という考え方があります。事実、値動きの裏側にはストーリーが付きものです。テクニカルアナリストは、過去の価格推移からその傾向を的確につかみ取り、次の展開を予想します。
仮想通貨市場の値動きは、需給に左右されます。供給が需要を上回れば値下がりしますし、需要が供給を上回れば値上がりします。
しかし、大切なのは、いつ・どのように価格が変化するかです。
テクニカルアナリストの主な仕事は、市場全体の流れをつかみ、価格変動の確度が高い地点を的確に見つけることです。
テクニカル分析は、最も高い信頼性で、効果的に値動きを予想できる手法です。とはいえ、複数のツールや項目を吟味して、総合的に判断する能力も求められます。たとえば、ローソク足チャートや取引高、流動性のほかに、多くのトレーダーは指標と呼ばれる各種チャートツールも併用しています。
仮想通貨市場のテクニカル分析で重要な項目をご紹介します。
価格変動
価格変動では、価格のボラティリティや取引高チャートを基に、将来の展開を予想します。
価格変動を重視するトレーダーは、さまざまな手法を用いています。価格チャート分析で利益を上げるトレーダーもいれば、価格レベルやパターン、指標などから価格変動を読み取るトレーダーもいます。
次に、価格変動のパターンをどのように金融取引で役立てるのかをご説明します。
上図は、ヘッドアンドショルダーのパターン例です。ネックラインを下回る反転が起きれば、大幅な価格変動のシグナルです。
他にも、以下のような価格パターンがあります。
ローソク足を読み解く
ローソク足は、テクニカル分析の中で最も効果的なツールです。日本で考案されたチャートで、OHLCチャートに類似しています。現在では、世界中のテクニカルアナリストに幅広く利用されています。主な活用方法としては、現在のローソク足の形状を見て、次の展開を予想します。その際には、1つのローソク足だけに注目することも、複数本をまとめて見ることもあります。
ローソク足からは、価格トレンドの反転や継続を判断できる場合がよくあります。この指標を利用すれば、下図のように、サポートレベルからの反転が買い場のサインだとわかります。
以下は、ローソク足から価格の継続サインを読み取れる例です。
総じて、テクニカルアナリストが仮想通貨を分析する際には、ローソク足で適切なサポートレベルやレジスタンスレベルを見抜くことが求められます。
トレンドとモメンタム
価格変動はトレンドを反映しています。急激なトレンドが起きれば、積極的な買いや売りの圧力を受けて、最高値や最安値を更新します。一方、調整トレンド中に最高値や最安値を付けることはまれです。
ビットコインのチャートで、急激なトレンドや調整トレンドを例示します。
2021年5月中旬、ビットコイン価格は調整局面にありました。60,000ドルのレジスタンスレベルを試していましたが、その後に急激な下降トレンドが起きて、わずか12日間で60,000ドルから30,000ドルへ急落しました。
この激しい値動きは、モメンタムの大きさを物語っています。急激なトレンドが売り方向に進む際には、市場は弱気のモメンタムです。この場合、トレーダーは売りのトレーディングに専念すべきです。一方、モメンタムが強気なら、バイアンドホールド(買い持ち)で利益を上げやすくなります。
テクニカル指標
テクニカル分析の黎明期に、電子チャートシステムはなく、トレーダーは紙とペンで価格を手書きしていました。
現在は、テクノロジーのおかげで効果的に取引できる環境が整っています。とりわけ仮想通貨市場は、恵まれた環境にあります。テクニカル指標を利用すれば、将来の値動きを予想しやすくなります。
テクニカル指標は、特定の測定項目に基づいて足元の価格状況を映し出します。ただし、テクニカル分析で確度の高い知見を得るには、複数の重要指標の使い方を習得しておく必要があります。
主要なテクニカル指標
テクニカル分析では、どの指標も大切です。トレーダーは、次のセクションで紹介する基本指標の使い方を身に付ける必要があります。
相対力指数(RSI)
RSIは、1~100の範囲でモメンタムを示す指標です。対象資産の買われ過ぎ/売られ過ぎを示します。RSI指標が30未満の場合は、弱気シグナルです。
一方、RSI指標が買われ過ぎゾーン(70以上)に達すると、反落のおそれがあります。RSIはモメンタム指標なので、買われ過ぎや売られ過ぎの状況が長期的に続く可能性もあります。そのため、他のテクニカル指標にも言えることですが、複数のテクニカル指標を併用すれば、長期トレンド中も高い信頼性で効率的にシグナルを見分けられます。
上図では、買われ過ぎや売られ過ぎのエリアに達すると、値動きが反転していることがわかります。
移動平均(MA)
移動平均は、特定の時間軸における仮想通貨の平均価格を示します。20日MAは、直近20日間の平均価格をなぞります。移動平均の基本的な用途は、過去の価格推移を基に、将来の価格を予想することです。
長期の価格分析には、単純移動平均(SMA)が適しています。一方、短期の価格分析には、指数平滑移動平均(EMA)が効果的です。EMAの最大の長所は、直近の価格に近づくほどウェイトが大きくなることです。過去平均からのクロスオーバーやダイバージェンスを手がかりに、相場の強気や弱気を特定できます。
上図では、価格が200日SMAより下に位置しており、長期トレンドは弱気です。そのため、トレーダーは売り方向の中で、20日EMAを手がかりに売りシグナルを見つけられます。
MACD
移動平均収束拡散(MACD)は、幅広く利用されているモメンタム指標です。2つの主な移動平均の関係性を手がかりに分析します。MACDヒストグラムが0を超えると、強気サインです。同様に、シグナル線より下に移動すると、弱気サインです。
主な利用法は、ヒストグラムの位置を観察して、将来価格の方向性を判断することです。また、ヒストグラムの高い値や低い値と対象資産の価格とを見比べて、拡散の度合いを見極める方法もあります。拡散が起きれば、価格の方向が切り替わるサインです。
上図では、ビットコイン価格が35,000ドルへ下落し、MACDでレギュラーダイバージェンスを形成しています。その後、価格は上昇し、MACDヒストグラムも高い値を更新しています。
ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドは、株式や先物、FXなど、さまざまな市場で幅広く利用されているテクニカル指標です。1980年代にジョン・ボリンジャー氏が考案した指標であり、価格とボラティリティの関係を極めて的確に判断できます。買われ過ぎ/売られ過ぎを判断する目安にもなるので、トレンドフォローやブレイクアウトポイントの発見に役立ちます。
ボリンジャーバンドは、日足ベースでどのように算出されているのでしょうか?
SMAに関する評価では、20日SMAが一般的に利用されています。これがボリンジャーバンド算出の基礎データになります。出発点となる20日SMAは、最初の20日間の終値を平均したものです。その後も1日ずつずらして、たとえば21日目の数値を含めた20日間の平均値を集計します。それに伴って、対象資産の標準偏差も算出します。
上側のバンド(帯)はレジスタンス、下側のバンドはサポートレベルとして機能し、中央のポイントは両線の平均価格を示しています。そのため、上側や下側のバンドから外れると、取引のエントリーポイントになり得ます。中央のポイントは最初の利食いレベルです。
ピボットとフィボナッチ
トレーディングにおいて、ピボットポイント指標は、価格の需給に根ざしています。需要と供給次第で価格が変化することは周知の事実です。しかし、需要と供給がほぼ同一になる価格レベルも存在し、均衡点として知られています。
金融取引において、ピボットポイントは均衡点を指しています。この水準に達すると、サポートレベルやレジスタンスレベルとして機能する場合があります。また、ピボットポイントには、均衡点の上下に複数のサポート/レジスタンスレベルが存在しており、価格の転換点になります。
上図で、ピボットポイントより上側の各線はレジスタンスレベル、下側の各線はサポートレベルです。基本的なアプローチとして、ピボットポイントから信頼性の高いローソク足の形状を見つけて、利食いレベルのサポート/レジスタンス材料になるかを判断します。
次に、フィボナッチについてご説明します。
フィボナッチ数列は、自然界の至る所に存在する重要な数学的現象を反映しています。金融取引でフィボナッチ・リトレースメントを利用すれば、調整や拡張の幅を特定しやすくなります。たとえば、急激なトレンドが起きれば、次の同様のトレンドまでに、38.2%や50%、61.8%の押しや戻りが発生すると予想できます。
また、フィボナッチ・エクステンション・ツールなら、押しや戻りの後に価格がどの程度まで変化するかを予想しやすくなります。161.8%や261.8%などの統計値を用いて、利食いや反転の予想ポイントを特定します。
上のビットコインチャートでは、38.2%、50%、61.8%のリトレースメントポイントを示しています。最終的に価格は361.8%のエクステンションレベルまで下落しています。
テクニカル分析の短所
2021年4月25日、ビットコイン価格は49,000ドルのサポートレベルを上抜けし、陽線になりました。その後、5月12日には57,732ドルまで戻し、60,000ドルを超えて過去最高値を更新する期待を抱かせました。当時の日次チャートでは、大半のテクニカル指標で買いシグナルが点灯していました。しかし、中国が仮想通貨決済を禁止するというファンダメンタルズに多大な影響を与えるニュースが流れ、5月中旬には59,507ドルから30,065ドルへ急落しました。
前述のシナリオは、仮想通貨市場で予想外のルールや規制が導入されて、テクニカル分析が機能不全に陥った典型例です。トレーダーは複数の指標や取引ツールを駆使して、値動きを予想しています。しかし、当然ながら、指標が指し示す方向に価格が動いてくれる保証はありません。また、テクニカル分析は、個人のバイアスや主観が入り込んで不正確になる場合もあります。
テクニカル分析の最大の短所は、ファンダメンタルズに影響するイベント(地政学的なニュースなど)がひとたび起きれば、テクニカル指標の見通しがすべて台無しになることです。最小のリスクで最大の収益を得る、これこそトレーダーにとって究極の目標でしょう。
そのための最善策は、仮想通貨の背景情報を調査し、信頼に足る情報を入手することです。直近のニュースや動向を洗い出し、テクニカル分析をファンダメンタルズの方向感と合わせます。
別の短所として、過去の価格変動に依存している点も挙げられます。一般に、市場のパターンやトレンドが不明瞭な場合、テクニカル分析は失敗に終わります。また、登場したばかりの通貨には過去データもないのが普通です。たとえ見つかっても、ボラティリティが高すぎて信頼性に欠けます。
実証データを基に分析していますが、市場に明確なパターンやトレンドが乏しければ上手く機能しません。
ファンダメンタルズ分析 対 テクニカル分析
ファンダメンタルズアナリストが定性ファクターを重視する一方で、テクニカルアナリストは過去の価格チャートを重視して対象資産のパフォーマンスを評価します。いずれの手法でも市場の先行きを的確に見通せますが、テクニカル取引戦略は、分析中の情報をトレーダーがどのように受け止めるかに左右されがちです。
ファンダメンタルズ分析(FA)は、対象資産のマクロ環境を考慮して、将来の値動きを予想します。たとえば、消費者の間で分散型金融(DeFi)が普及したり、コミュニティからの力強い支持が見られたりすれば、DeFiのトークン価格が急騰する可能性は大いにあります。そのため、トレーダーはこれらの要因を考慮すると、対象資産の将来の値動きを予想しやすくなります。長期目線で過大評価されていないかなども判断できます。
テクニカルトレーダーは、定量データを分析して市場心理を見極める傾向にあります。テクニカル分析は客観性が高く、合理的な意思決定につながりやすい手法です。過去データやチャートパターン、過去の取引活動、市場センチメントなど、テクニカル分析の市場データを利用することで、主観的な推測が入りにくくなります。そして、特定した過去の市場パターンを基に、将来の価格推移を予想します。このため、テクニカル分析は短期トレード向きといえます。
ただし、テクニカル分析とファンダメンタルズ分析の長所を最大限に活かすには、両方の手法を考慮して最良の取引戦略を構築することをお勧めします。
おわりに
テクニカル分析の主な目的は、仮想通貨の価格変動を分析して、将来の値動きを予想することです。幸いなことに、大半の時間軸で、金融商品は過去の価格変動をなぞります。
注意点として、完璧なテクニカル分析は存在せず、100%正確なシグナルを保証することもできません。プロのテクニカルアナリストは、絶えず取引シグナルごとの短所を見抜き、リスク管理を優先しています。
トレーダーは、仮想通貨の値動きの裏にあるロジックや理由を把握し、リスク管理体制を整えたうえで、その値動きを追うべきです。テクニカル分析の習得には時間と労力がかかりますが、ひとたび身に付ければ確度の高い利益に直結するでしょう。
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