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ダウ理論は、チャールズ・ヘンリー・ダウ(Charles Henry Dow)が市場理論について書き記した内容を基にしたテクニカル分析のフレームワークです。ダウは、ウォール・ストリート・ジャーナルの創設者兼編集者であり、米国の主要株価指数であるダウ・ジョーンズ・アンド・カンパニーの共同創設者でもあります。
ダウは自分の考えを理論として記録していたわけではありません。彼の死後に他の執筆者らがダウの考えを精査し、ダウ理論としてまとめました。現在、ダウ理論はテクニカル分析の基本概念としてさまざまな金融市場で用いられ、最先端の暗号資産市場でも活用されています。
この記事では、ダウの業績に基づいて、ダウ理論と市場のさまざまな段階について解説します。また、あらゆる暗号資産取引に有効な、ダウ理論に基づく実用的なチャート・リーディング技術も併せて紹介します。
ダウ理論は、公開市場での金融商品やコモディティの取引に関する最も有名で基本的なテクニカル分析理論です。1889年にウォール・ストリート・ジャーナルを創刊したチャールズ・ダウは、同紙の記事において自分の理論を発展させました。
1882年に、チャールズ・ダウ、エドワード・ジョーンズ、チャールズ・バーグストレッサーという3人の著名な金融ジャーナリストが、金融紙を発行するダウ・ジョーンズ・アンド・カンパニーを設立しました。同社の主な目的は株式市場を公平に分析することでした。また、ダウと彼の仲間の記者たちは、運輸セクターの株式に関する市場平均を開発したいと考えるようになり、それが後のダウ・ジョーンズ輸送株平均(DJTA)となりました。
ダウは1896年に最初の工業株価平均を開発しました。これがダウ・ジョーンズ工業株価指数(DJIA)です。現在、DJIAは米国株式市場の健全性を示す強力な指標として機能しています。ダウら3人のジャーナリストは、「カスタマーズ・アフタヌーン・レター」という株式市場の概要記事を毎日発行していましたが、それが1889年にウォール・ストリート・ジャーナルとなり、株式市場の人気を後押ししました。
ダウ理論の主な目的はトレンドの方向を予測することであり、その手法は単にDJIAとDJTAの動きを観察するだけです。その2つの指数がハイヤーローを更新しながら同じ方向に動き、その後にハイヤーハイが連続する場合、ダウ理論では「トレンドが強気である」と考えます。
逆に、その2つの指数のうち一方が過去の重要な安値を下回り、その後もう一方の指数の下落が続く場合、ダウ理論では「市場が下降トレンドにある」と考えます。
全体として、現在の市場で私たちが目にするダウ理論は、100年以上の長い歴史にわたり多くの人々が参加して開発してきたものです。ダウ理論は現代でも暗号資産や暗号資産デリバティブの取引に応用されています。
ダウ理論は、ダウ・ジョーンズが作り上げた6つのルールを基本原則としています。これは投資家が株式市場の枠組みを把握する際の指針となるものであり、強気市場と弱気市場のどちらにおいても正確な投資判断に役立ちます。
ダウは市場トレンドを期間に応じて3種類に大別しました。
プライマリートレンド:1~2年またはそれ以上の期間継続しうるトレンドの始点。
セカンダリートレンド:プライマリートレンドの一部だが反対方向に動いているもの。このトレンドは3週間~3ヶ月続く場合があります。
ショートスイング:ショートスイングまたはマイナートレンドは継続期間が3週間未満の価格推移です。
上のチャートはBTC/USDTの日次チャートであり、プライマリートレンドは強気です。強気トレンドの中には、セカンダリートレンドとみなされる弱気修正があります。
プライマリートレンドには次のフェーズがあります。
蓄積:蓄積フェーズでは、弱気のセンチメントを示す資産の価格は低位に留まります。賢明な投資家はこのフェーズで徐々に資金を投入して資産を購入します。その結果、価格は緩やかに上昇を開始します。
大衆参加:一般大衆は蓄積フェーズ後にトレンドに参加しますが、初期段階の投資家と同じ利益を得ることはできません。
分散:このフェーズでは、初期投資家は、トレンドが力を失いつつあること、および取引を手仕舞う時期が近づいていることを把握します。そのため、初期投資家がポジションをクローズした後で、最終的に市場が反転します。
効率的市場仮説(EMH)によると、資産の現在の価格は、公表されているすべてのニュースを折り込んでいます。つまり、個々の投資家が市場情報を分析しなくても、資産価格は最新のニュースが生み出すセンチメントに従うことになります。したがって、投資家が将来の成功や失敗の可能性について考えようとする場合は、事前ニュースと事後ニュースの両方を考慮する必要があります。ただし、最新のニュースが生み出したセンチメントに市場が必ず従うという保証はありません。
効率的市場では、重要なニュースが公表されると、暗号資産の価格はその直後に反応し、そのニュースが市場のセンチメントに与える影響を折り込もうとします。
この原則は、ダウ工業株平均とダウ輸送株平均は方向が一致するはずであるという考え方です。
その背後にあるのは、商品の製造に由来する指数と販売に由来する指数には相関性があるという概念です。たとえば、輸送という事業を行うには、輸送する商品が製造され、倉庫から出荷されることが必要です。したがって、輸送株が下落すると工業株も下落します。
理論上は、工業株平均と輸送株平均が歩調を合わせて推移している場合は、市場のセンチメントが安定していることをそれらの指数が追認しているはずだといえます。それら2つの指数の一方が上昇方向に動き、他方が下落方向に動く場合は、2つの指数に乖離が生じており、現在の市場トレンドが逆転する先駆けとなる可能性があると考えられます。
ただし、現実の世界では、企業が商品の配送に利用するのは鉄道輸送ではなく、航空輸送や海上輸送などの手段です。また、Microsoft、Apple、Googleなどのテクノロジー企業は、航空輸送や海上輸送さえ必要としていないかもしれません。そのような場合は、S&P 500、FTSE 100、NASDAQ 100などの指数を利用することにより市場の方向性を特定できます。
上のグラフはDJIAとS&P 500との相関関係を表しています。2つの指数の動きは同期しており、正の相関があることを意味しています。
価格がプライマリートレンドに沿って動く場合、取引高が最初から高水準で推移するはずであり、価格がトレンドに反する動きをする場合は取引高が減少するはずだと考えられます。取引高が大きいという事実は、多数の投資家がトレンドに加わり、トレンドの安定度が上昇しているということを表しています。
一方、大きなトレンドに反する動きの取引高が少ないことは、市場参加者が少なく、取引が行われる確率が低いことを表しています。
ダウ理論では、プライマリートレンドは、市場のセンチメントを逆方向に変化させる大きなイベントが発生するまで継続すると考えます。ただし、価格が反対方向に動いたとしても、それが一時的な動きである可能性が高ければ、プライマリートレンドは継続していると考えます。
上の図はBTC/USDTの日次チャートです。価格が30~50%下落している局面があるにもかかわらず、強い上昇トレンドに乗って価格が上昇していることがわかります。
このチャートは、プライマリートレンドに沿って取引ポジションを開始し、トレンドに反する動きは無視するという考え方の正しさを証明しています。
ダウ理論は100年前の原理に基づいています。そのため、特に暗号資産に関して、ダウ理論は最先端の現代の金融市場でも有効なのかと疑う投資家は少なくありません。
今日の金融市場は高頻度取引のアルゴリズムにより支えられていますが、市場の背後には人間の頭脳による強力なロジックが生き続けています。つまり、ダウ理論は暗号資産市場でも活用できるということです。ただし、活用法は異なります。
現在では、テクノロジー銘柄が優勢となったことによりDJTAはNASDAQ 100に地位を譲っており、有効性が既に低下しています。そのため、DJTAをDJIAと併用することはできませんが、大きな市場のトレンドを読むという考え方は変わっていません。
ダウ理論を暗号資産市場に応用して、高い利益をもたらす価格トレンドを見極める方法について考えてみましょう。
まず、プライマリートレンドを見つける必要があります。暗号資産市場は古くから存在する外国為替市場と比べて非常に新しく、主な暗号資産の大半が強気バイアスで始まります。そのため、暗号資産市場ではプライマリートレンドを簡単に見つけることができます。
下のBTC/USDTチャートでは、市場が全体として強気であり、最初からスイングハイが現れています。
このチャートは、プライマリートレンドが強気でセカンダリートレンドが弱気なBTC/USDTの日次チャートです。
ダウ理論に従えば、プライマリートレンドだけを目指して取引を行うことが必要です。この場合はセカンダリートレンドが終了するのを待たなければなりません。価格が直近のスイングハイを超えると、弱気のセカンダリートレンドは終了します。その様子を表したものが下のチャートです。
上のチャートは、第2波の中で下落した価格が、直近のアップスイングを突破した直後に回復する様子を表しています。価格はその後、衝撃的な強気圧力を受けて上昇します。
取引のエントリポイントを正確に見極めるには、プライマリートレンドとセカンダリートレンドを考慮することに加えて、取引高のデータを参考にしながら蓄積と分散のフェーズについて考えることが必要です。
上のBTC/USDT日次チャートでは、買い取引のエントリポイントは以下の項目を確認することにより決定できます。
プライマリートレンドが強気である。
市場は分散のフェーズを終えて蓄積フェーズに入った。
蓄積フェーズでは、セカンダリートレンドが弱気であり、新しいスイングハイで逆転している。
取引量は引き続きプライマリートレンドを支持している。
ダウ理論は、価格の方向を予測するために最低2年間のデータを必要とします。暗号資産市場では、2年以上の履歴がある信頼できるデータを見つけることはほぼ困難です。また、暗号資産市場はボラティリティが高いため、2年以上のデータが見つかったとしてもその信頼性には疑問があります。
その他、現在の市場トレンドの信頼性について定義することは難しいという点も考慮する必要があります。ダウ理論では、価格がスイングローに近づいている場合でも上昇トレンドは有効だと考えます。また、価格がスイングハイにある場合は下落トレンドが成立していると考えます。したがって、長い目で見れば、ダウ理論は高いボトムと低いトップだけを考慮していることになります。何がプライマリートレンドやセカンダリートレンドに該当するのかについての明確な説明はありません。
一般に、投資家はサポートレベルとレジスタンスレベルが重要であると考えています。強気筋はサポートレベルから買い取引を始め、弱気筋はレジスタンスレベルから売り取引を始めます。一方、価格がサポートレベルやレジスタンスレベルを突破するとポジションが反転します。サポートレベルはレジスタンスレベルになり、レジスタンスレベルはサポートレベルになります。ダウ理論では、価格が短期的なスイングレベルを突破するとサポートレベルとレジスタンスレベルのポジションが反転するものの、それはサポートレベルやレジスタンスレベルによる取引の一部にすぎないと考えます。
そのため、取引の確率を高めるには、チャートに他の要素を追加する必要があります。移動平均、MACD、確率オシレーター、VWAPなどのツールを併用して取引の洗練度を高めれば、暗号資産市場では今でもダウ理論を有効活用できます。複数の指標が同じ方向を示している場合、価格がそれに追随する可能性はさらに高くなります。
この記事が、ダウ理論とは何かを知る手がかりとなり、ダウ理論が暗号資産市場にとって重要であることを理解するお役に立てれば幸いです。暗号資産市場のスイングトレードやデイトレードにダウ理論を応用する場合の主な注意点は、他の指数との相関を持ち込むことです。暗号資産市場は非常に新しい市場であり、ブロックチェーン技術を通じて、純粋な需給に従って変動します。仲介者なしで資金を送金できるというブロックチェーンの概念は新しい概念であり、さまざまな指標と相関させることには困難が伴いますが、ビットコインやイーサリアムなど類似の資産の価格推移を集合的に捉えれば、現在の市場センチメントを把握することは可能です。
暗号資産の取引にダウ理論を応用する方法を理解している場合でも、取引計画を十分に検討することは必要です。暗号資産市場は不安定であるうえに、現在でも規制当局の要件を充足しようと努力している段階にあります。したがって、このセクターに資金を投入するならば、堅実な資金管理ルールがある場合であっても懐疑的な姿勢を崩さないことが賢明でしょう。